穴開け
勾玉制作の大一番とも言えるのが“穴開け”の作業である。魚形起源説を持つ勾玉の目の部分にあたる箇所は、原石の表面がまだ平らな状態で穴が開けられる。勾玉の頭部にあるこの穴に紐を通し、先人たちは装身具として身につけたのである。
職人は、研磨剤となる砂を超音波穿孔機の先端に沿って流しながら、調音波振動により高精度の深穴を実現していく。超音波穿孔機の穴開け部分の先端はパイプ状になっており、印付けられた箇所を精細に破砕することができる。パイプ状に抜かれた碧石は、その技術の正確性を物語っている。
地球から切り出された原石は、まっすぐにしかカットできず衝撃に対して弱い方角で欠けていくもの。言うまでもなく長年の経験と修行なしではできない技だ。
非常に細かい結晶性の石英の一種である碧石を、職人はひとつひとつを慎重に穿孔し、開けた穴はカンが入り割れないように穴の周りを面取りする。眺めるたびに不思議に感じられる玉の孔は、精密かつ精巧な技術に支えられている。